日本棋院リリースの
記事で、「囲碁は考える力を向上させる!」と発表されました。
何度か書いてるんだけど、こういう「囲碁は脳に良い!」という議論のもっていきかたは「どーでもいい」感じに思えるんですよね。「囲碁が脳に良い」ならば、「脳に悪い」ないし「脳に良くない」ものを比較して教えてもらいたい。
「読書」はどうですか? 「野球」は? 棋院での人気スポーツのひとつ「ゴルフ」はどうなんでしょう? いずれの場合も「囲碁」とさほど変わらない結果が出るんじゃないのかな。川島教授自体、他で「句作が脳トレ以上に脳を活性化させる!」とか発表されてますしね。
「囲碁は日本の伝統文化のひとつであり、伝統文化に親しみながら頭にも良いという意味があって」とか言うなら、それは既に「頭に良い」云々の話じゃなく、「頭に良い」は「こじつけ」だったり、「単なる流行」っぽい。
日本棋院はこの記事に関して、調査の発表内容としてPDFを公開してるんだけど、このPDF資料もまたお粗末。PDF自体がキタナイのはまあ良いとしても…
日本棋院は「思考力」「短期記憶力」「総合的な作業力」についての検査が行われたと言う。テスト結果を報告するなら、そのそれぞれをまず定義して欲しい。
まあそれぞれについて「トポロジー検査」「即時再生検査」「Digit-Symbol検査」が行われたことが書かれているので、「どういう観点から」テストをしたのかはわかる。但し報告書からわかるのは「観点」だけであって、具体的にどのようなテストを行ったのか不明。
まあ「それぞれの能力を見るための信頼できるテスト手法であるので、専門外の人間にとやかく言われたくない」というならそれも認めてもいい。
ただ、結論を導くのに被験者の前後数値だけを提示して「三ヶ月後に大幅な得点の増加を示した」とされるのはちょっと脱力する。
本研究の結果より、囲碁教室に通う子ども達が3ヶ月間の週1回1時間の囲碁を学ぶことによって認知機能が向上することが確認できた。囲碁教室に通うことによって幅広く前頭前野をはじめとする脳機能がより発達したためと考えることができる。
という解説に到っては「あんぐり」な感じ。もちろん日本棋院にはよりきちんとした情報が上がってきてはいるんでしょう。でもこのPDFだけを提示されたら「棋院もいよいよワヤなんか?」と思えたりもする。
まずさ。
被験者とそれ以外の比較数値が欲しい。相手は小学生ということであり、「テスト」自体に不慣れのケースもあるし、また今回行った3種類のテストについて全く未経験だったことが考えられる。そうであれば一度テストを「経験」することによって「大幅な得点の増加」があるのかもしれない。
また、小学生にとっての「三ヶ月」は、私のようなじじいにとっての「三ヶ月」とは異なり、大いに「脳機能がより発達」する時期だとも考えられる。
すなわち被験者(囲碁教室経験者)のみのデータを挙げられても何の結論も導けない。
また、囲碁教室が1週間すなわち 24*7 = 168 時間の中の1時間のみを占めるものであることも注目に値する。囲碁教室以外の時間はどうしてたのか。囲碁教室を始める前とその後に、囲碁教室時間以外での生活習慣による影響をどう判定してるのか。
囲碁教室時間以外の生活習慣の(プラス方向への)変化は即ち「囲碁教室に通うことによってもたらせた変化なので広い意味で「囲碁教室による効能」と言うこともできるなんていう乱暴な結論もあるかもしれない。しかしそんなこじつけを許せばますます「テスト」自体の意味があやしい。
また、結論データは「有効データ」に基づいて判定されているけれど、「有効データ」と成り得なかった検査対象組の「無効」となった理由は何か。開始時に点数の低かった集合がドロップアウトしたということはないか。あるとすれば「囲碁が頭をよくした」のではなく、「素質のある子に複数回テストを行えば点数が向上した」という、わけのわかんない結論になったりはしないか。
こういう資料を公開すると、どうせ日本棋院は叩かれるわけですよ。「赤字なのに金出して(出してますよね?)、こんな程度の調査やってていいのかよ」とか、「ハヤリモノに乗っかればなんとかなると思ったんだろうけど、こんなレベルの議論かよ?」とか。
レポートとしてもうちょっときちんと読めるものを、できれば綺麗なPDFで出して貰いたいと思うわけです。