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『東大教養囲碁講座』

好著でした。別のところにも書いたんだけど、最近「光文社新書」が頑張ってませんか。どうも「新書発刊ブーム」の頃以降に出た新書ってのは眉唾で読む癖がついてるんだけど、なんだかちょっと光文社新書は頑張ってる。

東大での囲碁講座を文書に落としたものなんだけど、その講座は、

全くの初心者を対象とした、成人のために囲碁入門指導法の開発と実践を目的
としてる。

そしてその目的のため、

  1. 「石埋め碁」で囲碁のルールに慣れる。
  2. 「決め打ち碁」で、布石の考え方を身につけ、初心者でもすぐに終局まで打てるようにする。
  3. 「囲碁の心得」の形で、言葉を積極的に使って上達を図る(傍線引用者)。
ということを、授業の特徴としてる。

「石埋め碁」や「決め打ち碁」が何かは本書を参照して頂くとして。3番目の説明を詳解して

中学生以上の人が囲碁を学ぶときには、小学生が学ぶときのように、理屈抜きにひたすら打って試行錯誤で学ぶのではなく、囲碁の基本的な考え方を言葉を通じて学ぶのが、いいのではないかと思います
とある。

「得たりっ」なわけですよ^^。

何度も書いてるけど、私も 40 歳近くになって碁を始めた。だから「囲碁語」はほとんど全て「日本語」に翻訳して碁を打っています(そうでないところに関する「気付き」もあるんだけど、長くなるので略)。だからこそ入門者と打つときに、「呟き碁」を提唱したり、打ちながらのエクスキューズ(言い訳)をきつく咎めたりしてるんですよね。

一般の囲碁教室なんかだと、人それぞれの目標やモチベーション、あるいは理解度なんかもあるので、囲碁を理解する際の「言葉」の援用にも限りがある。だけど大学の「講座」であってみれば、それぞれについて「ほぼ均質である」ということが想定でき、その想定に則って効果的に囲碁学習を進めていくことができる。

東大囲碁講座とは、上に書いたような「背景的目標/前提」に則って、如何に囲碁を学習させるかということが書いてある。そしてこの目標・前提に則った教育法は「大人にとって」最も効率的な指導法だと、私も、考えているのです。

惜しむらくは本書。独学に利用するには「やや大変」なところがあるでしょう。即ち後半、とくに十九路盤の説明部分になると、紙面に結構長い棋譜が提示されるんですね。講座と同様に学ぼうと思えば、そういう棋譜をきちんと並べて学習していかなくちゃならない。

「初心者」に棋譜を並べるのは無理だろうと思う。またちょっとでも碁が打てる人には「わかりきったこと」もある。だから本書のエッセンスをきちんとくみ取りながら、ステップバイステップで本書を「実践」するにはそれなりの「忍耐」が必要になってしまうかもしれない。

また、教室などでの「指導メソッド」に使う場合にも若干の問題がある。それはすなわち日本棋院の教室に於けるような「お客さま相手」の場では使いにくかろうということ。「お客さま」には「打ちたい」人もいれば「勝ちたい」人もいるし、「学びたい」人もいる。とくに「勝ちたい」人を「学習」の方向に向けるのはほとんど無理と思う。

結局「実践」として使える場は非常に狭いかもしれない。でも本書に書かれたような「メソッド」があることを知らしめるのは非常に大事なことと思う。

初心者の大人すら「感性」とか「自由」とばかり言い募る風潮へのカウンターになってくれればなあと思ったりもするわけです。

尚本書、冒頭に著者の一人である兵頭俊夫(東大教授)の書いた、囲碁を学ぶことによる効能が列挙されています。自分が言ってることに似てるからってのもあるんだけど^^、いたずらに「囲碁で頭が良くなる!」とか言い募るより、よっぽど説得力があると思うので、最後にこの部分を引いておきます。

  1. 基本を理解し、錬磨して、工夫することの重要さを学ぶことができる。
  2. 状況を判断して、自分の責任で決断し、実行したことの結果に責任を持つ習慣が付く。
  3. 見ているのに見えていないことがよくあることを、自覚させてくれる。
  4. 欲張ると破綻することを思い知らせてくれる。
  5. 正しい大局観と正しい局所的判断の両立ができるようになる。
  6. 先を読む力がつく。
  7. 考える習慣がつく。
  8. 負ける経験ができる。

P.S. 尚、ブルーバックスの『進化しすぎた脳』あたりを併読すると、また得るものがあると思います(^^)。

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コメント (8)

定年囲碁:

いつも、楽しく拝見させて頂いてます。
長い人生を歩んで来ましたが、囲碁の対局をしていると、相手が素振りを見せているだけであったりと、まだまだ囲碁の精進の道は遠いように思います。
機会があれば、是非一局ご指導頂けたらと思います。
これからもブログ更新を楽しみにしております。

定年囲碁さん:
コメント頂いてありがとうございます。「君のブログはコメントが少ないね」と言われて以来少々気になってるので^^、コメント頂ければとても嬉しゅうございます。

> 機会があれば、是非一局ご指導頂け
> たらと思います。

そういうことをおっしゃいつつ…。世の中には私より強い人の方がはるかに多いんですよね^^。

もし私の記事が偉そうに聞こえているならすみません。初心者が「それなり」(当社比)になりつつあるときに、何を考えて勉強してるのかと、ちょっとでも参考になるところがあればいいなあという意図もあって、お目汚しなところも多いかと存じますm(..)m。

BUBI:

とりさん、こんにちは。

この8つの囲碁の効用、読んで感動しました!

特に

2 状況を判断して、自分の責任で決断し、実行したことの結果に責任を持つ習慣が付く。
3 見ているのに見えていないことがよくあることを、自覚させてくれる。
4 欲張ると破綻することを思い知らせてくれる。

自分のことを言われているようで^^;

そして最近思うのは・・・

8 負ける経験ができる。

私も土曜囲碁サロンで13連敗してましたが、最近やっと片目があきました。いろんな人と打っていっぱい負けても、それを乗り越えたところで得るものは、きっととても大きいのだろうな、と思います^^

こばぴさんはネット碁で勝てるようになったかな~

眉山軒:

いい本であり、とりさんの解説がまた上をいっていて、会心の作品だと感じました。こんな素晴らしい文章が書けるとりさんに是非私も一局指導して頂きたいと思います。

眉山軒さん:
あの~、私、いぢられるのは好きだから、いぢって頂くととても嬉しくはあるんですけれども…

ウワテの眉山軒さんが「指導して頂きたい」とか書くと、もしかしてこの人も私を嘲笑してるんではないかと心配になってしまいます^^。

なかなかネットで打つ機会を持つことができなくてすみませんです。

BUBIちゃん:
コメントが隠れてしまってて、一瞬スルーしてごめん^^。

本に書いてある「囲碁の効能」、いいよね。「脳に良いんだぞ」の棋院リリースを見た直後だから、余計にこの具体性の「良さ」がしみるのかな(^^)。

2 状況を判断して、自分の責任で決断し、実行したことの結果に責任を持つ習慣が付く。

ミーハーな映画だけどさ。流行った「プライベート・ライアン」ってあったじゃない? 上陸した後ミラーで覗きながら突進していくシーン。

あれってよくある戦争描写なんだけど、あの「砦」を落とすことの大事さってわりにうまく表現されてたよね。即ち指導者は「お前達の役目」を理解して戦士を走らせてる。

碁を打つときも、「石の役目」を理解して石を置くことが大事なんだなあと、なんかダサイ「ロマン」風だけど^^。碁を打ちながらたまにあの映画のシーンが思い起こされます。

眉山軒:

とりさんへ
誤解を招く書き方に深く反省いたします。誠に申し訳ありません。
ただ私は、とりさんのブログを愛するあまり、つい悪乗りしてしまいました。今後気を付けますので今までどおりよろしくお願いします。

眉山軒さん:
いえ、冗談もあって書いて下さってるんだろうと理解してますよ~(^^)。本当は大変喜んでいます。
今後ともよろしくお願いします。

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