私がここ2年ほどずっと欲しかった本。「利き」に関する本(らしいもの)が手元に届きました。「らしい」と書いているのはまだ序章しか読んでいないから。
前々からね。「利かしの善し悪し」や「利き筋の多寡による打ち方の変化」に関する本が欲しくて溜まらなかった。何人かの先生には「利き筋から見る碁の打ち方」なんて本をぜひ出して欲しいなんてお願いもしていたんですよね。
ある先生は「う~ん、あまり面白そうじゃない」^^。ある先生は「研究会ではよくやってるんですけどねえ…」。でもついに大御所から出たのが左上に掲載している『「利かし、利き筋」集中講義』。まさか小林覚先生が書いてくださるとは思ってなかったな。
で、棋院で探していたんだけどちょっと見つからなかったから、アマゾンで購入しました。
ファースト・インプレッション。
帯、嫌いです。「アタリは最後まで利かすな!」。
この帯を見た瞬間は相当にがっかりしました。この「アタリは利かすな」ってのは級位者の教室でも頻繁に言われること(まあそれでも打っちゃうわけだけど(笑))。この「アタリは利かすな」レベルの本が欲しくて小林覚の「利かし」に関する本を買ったわけでは絶対にない!
これがもっと名の売れていない棋士の本であれば、もしかするとこの帯を見ただけで買わない決断をするかもしれないくらいに嫌いです。
ただ、帯ってのは往々にして著者にも相談せず、かつ、ただ単に刺激的な言葉を選んで付けられるもの。小林覚先生の本であれば、帯だけで読むのをやめることはやめましょう^^。
序章。
最初に出てくるのは利かしの定義。これはかなり好感が持てます。
- 先手を取れる
- 得できる
- 相手からの反発の手がない
まあ言ってみれば当たり前の定義。しかし本書を通じてこの指標に戻って解説しようと試みているらしいのは、解りやすさの観点から考えて良いですね。
そしてテーマ図1~4で、低級者の悩みそうな「利かしと味消し」の解説を行っています。これまた想定読者からすれば「当たり前」に見えますが、最初に定義を明らかにするという意図で頷けるものです。
但し、おまけのようにくっついているテーマ図5。これはシチョウ当たりに関する話なんだけど、これは「利かし」のテーマから離れてしまっているように思えます。再度個々で「読むのをやめようか」という気持ちを持ってしまう立ち読み読者もいるんじゃないかな。このテーマ図5の解説を読んでも、この「シチョウ」が、本書のテーマにどう絡んでくるのかはあまりよく見えません。
そして序章の最後。よくあるように本書の構成を示しています。それによれば
- 第一章のテーマ「利かしの判別」
- 第二章のテーマ「利かしのタイミング」
- 第三章のテーマ「様子見の利かし」
- 第四章のテーマ「プロの実戦に学ぶ利かし」
とのこと。
ふむ。本書は「利かし」の本であって「利き筋」の本ではなさそうな感じで、やや残念な印象はあります。「利かし」だけを扱うならば、既に趙治勲の『キカシの哲学
』という好著がある。あるいは李昌鎬の自選解説本の多くも、多くが「利かし」をテーマに語っている。
ただもちろん。扱うテーマが「おざなりにして良いテーマ」なわけではなく、むしろ初段とその上(日本棋院二階比)を分けるメルクマールであるとも言える。
そういう点を、タイミング良く、分かりやすく整理しているのであれば面白い本だと言えそうです。
序までを読んだ総評。
最近の棋書は、いくつか棋譜解説を載せてそれにテキトーなタイトルを付ける本が目立つように思っています。しかし少なくとも本書はそのような安直な作りではなく、きちんとテーマ解説を試みる本であるようです。その点で「利かし」に関する知識のない方には現時点でお勧めできる。
各章の内容については、また機会があればレビューしてみたいと思います。